About Bored of Plastic
Bored of Plasticについて

昨今よく耳にするようになった、プラスチック汚染。 「Bored of Plastic(プラスチックには飽き飽き!)」は、 保存容器を活用する、という観点から、無意識のうちにプラスチック汚染に貢献しないための方法を紹介するウェブサイトです。

でも食品や日用品はプラスチックに包まれ、数円でプラスチックの袋が買えてしまうなか「保存容器を活用しよう!」と思うには、まずなぜプラスチックが悪者扱いされるのかを知ることが大切でしょう。


理由その①地球温暖化を促している

石油でできたプラスチックは、焼却するにも、生産するにも地球温暖化に大きく貢献する温室効果ガスを発生させます。WWFによれば、現状世界では年間で8億5,000万トンもの温室効果ガスを大気中に放出しているそうです。このまま何もしなければ、2050年にその量は28億トンにまで増えることが予想されています。


参考: Plastic waste and climate change - what's the connection? (WWF、2019年7月4日)


理由その②海に流れ込み、海洋生態系に被害を及ぼしている

一年で出る世界のプラスチックごみのうち、およそ3%が収集されず、下水管から川へ、川から海へと流れ込むとされています。3%はそこまで多くないように聞こえますが、重さ4億トン以上のうちの3%なので相当です。2010年の3%は、約800万トン(※1)。このうち、日本が占める量は2万から6万トンだといわれています(※2)。もっといえば、海にはすでに1億5,000万トン(※3)ものプラスチックが沈んだり浮かんだりしています。「プラスチックよ、海で分解してお願い」と祈るだけで済めばいいものの、ペットボトル1本が日光を浴びながら海で分解されるのにかかる年数は450年(※4)だといわれています(プラスチックの分解速度はものによって異なります)。

海に浮かぶプラスチックをクラゲなどの獲物と勘違いして、食べてしまったウミガメやクジラの話をニュースで見たことがあるかもしれません。海鳥も同じように、プラスチックごみを餌と思い食べてしまうようです。ただ食べても消化されないため、空腹感がなくなり、結果として餓死してしまう海鳥も決して少なくありません(※5)。


参考:※1 Our World in Data、※2 日本財団ジャーナル ※3 Stemming the Tide ※4 Our Oceans: Plastic Soup(Earth Institute, Columbia University)※5 このアザラシ、海鳥、ウミガメを直視できるか プラスチック危機の恐るべき脅威(ニューズウィーク日本版、2019年11月20日)


理由その③なかなか分解してくれない

でも、リサイクルされているんじゃないの?と思うかもしれません。まさか、と思うかもしれませんが、世界でリサイクルされているプラスチックはたったの9%。ごみ処理地に埋め立てられたプラスチックが生分解するまでには1,000年ほどかかるといわれています。プラスチックでできた身近なものの分解速度を見てみましょう。

生分解にかかる時間…

プラスチックの袋 20年
カフェでコーヒーを注ぐのに使われるカップ 30年
昨今問題になっているストロー 200年
冷たい飲みものに使われるコップ 450年
歯ブラシ 500年
おむつ 500年

参考: The lifecycle of plastics (WWF、2018年7月19日)


理由その④日本が掲げる「リサイクル率84%」にはカラクリがある

リサイクルを日本語にすると、再資源化。使われたプラスチックを分解して、再度資源にすることを指します。そう聞くと、飲み干したペットボトルが新たにペットボトルになる、などを想像する人もいるかもしれません。ところが、リサイクル率84%のうち、例にあるようにプラスチックが新たなプラスチックに生まれ変わる「マテリアルリサイクル」は23%。リサイクルの過程でプラスチック分子を劣化させてしまうマテリアルリサイクルのもう一歩先を行き、プラスチックを分子まで分解して再利用する「ケミカルリサイクル」はたったの4%。残りはプラスチックを燃やしてエネルギーを回収する「サーマルリサイクル(=熱回収)」だとされています。熱回収は、そもそも海外ではリサイクルとされていないうえに、環境に悪影響を与えることから、むしろあまり好ましくないとされています。


参考: 世界基準からズレた日本の「プラごみリサイクル率84%」の実態(Forbes Japan、2019年1月10日)


次に浮かび上がる疑問といえば、「プラスチック汚染につながる行動って?」

行為その①プラスチックで包装された・プラスチックでできた商品の購入

プラスチックが生活必需品の大部分を占めていることは、家のなかを少し見渡せば一目瞭然でしょう。台所で使うキッチンスポンジ、サランラップ、歯ブラシ、カミソリ、ハンガー、タッパー、レジ袋、シャンプーの容器、薬が入った袋、タバコの吸い殻(※1)、ボールペン、化粧品の入れ物などなど。2015年時点では、生産されるプラスチックのうち、最も多くを占めるのは36%のパッケージ(※2)でした。「Bored of Plastic」では容器プラスチックを減らす方法を紹介していますが、持ち物のうちどのようなものがプラスチックでできているかに気づいて、代替品探しを習慣づけていくことも大切でしょう。

参考: ※1. たばこの吸い殻は最悪のプラスチック汚染物質、フィルターでがん防止できず(Forbes Japan、2019年1月10日)、※2. 第4回 海洋プラスチックごみの問題と、 解決に向けて私たちができるこ(NTTグループ)


行為その②ポイ捨て

ポイ捨てされたごみの一部は、適切に処理される余地もなく排水などを伝って、川や海に流れ込みます。特に海辺では、拾っても拾ってもプラスチックのごみがなくならない場所も少なくないことから、ビーチクリーンアップ活動が世界各地で催されているほど。ブラジルとナミビアの間に浮かぶ島、セントヘレナでは、とんでもない量のペットボトルが浜辺に打ち出されていることからラベルに目をやると、何千マイルも離れたアジア諸国からのごみだということがわかったそうです。ゴミ箱がない場所にいるのであれば、ごみ箱が見つかるまで責任を持ってごみを持ち歩く、を基本としたいところです。

参考: Beach clean-up study shows global scope of plastic pollution(National Geographic、2018年10月10日)


行為その③洋服や衣類洗剤の選び方

プラスチックといえばレジ袋など、ある程度形のあるものが想像しやすいですが、それをウンと小さくしたマイクロプラスチックも海洋プラスチック汚染につながるものです。5ミリ以下とされているマイクロプラスチックが潜むのは、多くの衣類洗剤。さらにはポリエステルやアクリル、ナイロン素材でできた衣類にも潜んでおり、洗濯機で洗うとそのマイクロプラスチックは少しずつ削ぎ落とされて、水とともに流れていきます。つまりは洗濯機を回すたびに、衣類洗剤と衣類のマイクロプラスチックが排水溝を伝い、海へと流れ込むことになります。


マイクロプラスチックを不意に食べる魚が増えていくにつれ、魚を食べるわたしたちの体内にもマイクロプラスチックが入り込むとされています。実際にアメリカ最大の国立医療専門組織(ACP)から発表された研究によれば、8カ国から健康な対象者を8人を選び出し、彼らの便を調べたところ、8人中8人の便からマイクロプラスチックが見つかったそうです(※1)。 人体への影響はまだはっきりしていないものの、プラスチックの原料とされるBPAに関しては、生殖器や神経系に問題を起こす可能性がある、という研究結果が多く発表されています(※2)。特に胎児や乳幼児は大人よりもその影響を受けやすいようで、哺乳瓶やマイボトルなどはBPAフリーのものが推奨されています。


参考: ※1. 現代人は知らずにプラスチックを食べている?日経メディカル、2020年1月22日、)Detection of Various Microplastics in Human Stool (Annals of Internal Medicine、2019年10月1日) ※2. High BPA levels linked to 49% greater risk of death within 10 years, study says (CNN、8月18日2020年)


ここまでくると明日からでもプラスチックをごっそり排除したくなりますが、生活と溶け込むように存在するプラスチックとお別れするのは、なかなか難しいことでもあります。「Bored of Plastic」で提案するように、プラスチックに包まれたものをなるべく買わないことは、生活からプラスチックを減らしていく方法の一つです。でも、そのほかにもできる小さなことは思う以上にたくさんあります。「Bored of Plastic」では、どんなに些細なことでも、できるところから一歩ずつプラスチックを減らしていくことが、今せめてでもわたしたちにできることだと考えます。